行方不明の相続人がいる
相続人の調査をしてみると、行方不明になったり生死不明になっている相続人がいる場合があります。
とはいえ、それらの相続人を無視してはいけません。仮に残った相続人だけで遺産分割協議を行い、まとまったとしても、その遺産分割協議は認められず無効になります。人は死亡しない限り権利を有し、行方不明だからという理由で権利を奪うことはできないからです。
遺産分割協議はあくまでも相続人全員の同意が必要です。まずは可能な限りの手を尽くして行方不明の相続人を捜し、何とか相続人全員が揃って遺産分割協議ができるようにしてください。
それでも行方が分からない場合や、とりあえず急いで遺産分割協議をしなければいけない場合もあると思います。
そこでこのようなときには不在者財産管理人の選任と失踪宣告という二つの方法があります。
不在者財産管理人の選任と失踪宣告の違い
「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」は、いずれも相続人が行方不明のときに執る手続きですが、法的な効果は決定的に大きな違いがあります。
- 不在者財産管理人の選任
行方不明者が所有する財産について、行方不明者に代わって財産を管理する管理人を選任する。 - 失踪宣告
失踪宣告を受けた行方不明者は法律上死亡したものとみなされる。
不在者財産管理人は行方不明者が生存していることを前提に扱っていることに対し、失踪宣告は行方不明者が死亡したものとして扱います。
よって失踪宣告はいつでも認められるのではなく、一定期間以上生死が不明な場合に限って認められます。
「不在者財産管理人」と「失踪宣告」の違いをまとめると以下のようになります。
不在者財産管理人
不在者財産管理人は相続人が勝手に選任するのではなく、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立を行い、裁判所に決定してもらいます。
また「不在者財産管理人の選任」は、あくまでも不在者の財産を管理する人を選ぶための手続きです。財産を管理するだけなので遺産分割協議に参加したり、協議に同意するといった行為を行うことは出来ません。
不在者財産管理人が遺産分割協議に参加したり、協議に同意をして財産を処分行うためには、別に「不在者財産管理人の権限外行為許可」の手続きが必要です。
申立先は同じ家庭裁判所なので、遺産分割案ができているのであれば「不在者財産管理人の選任」の申立をするときに「不在者財産管理人の権限外行為許可」の申立を行えばスムーズに手続きを進めることができます。
失踪宣告
失踪宣告ができるのは、普通に生活をしていて7年以上生死が不明なとき又は事故等によって1年以上生死が不明なときに限られます。
失踪宣告が認められると失踪宣告を受けた人は生死不明になってから7年間(1年間)の期間が経過したときに死亡したものとみなされるので、相続の現場では被相続人の相続だけでなく失踪宣告を受けた人についての相続も発生します。
後になって失踪宣告を受けた人の生存が分かれば失踪宣告を取り消すことが出来ます。失踪宣告を受けた人の財産について既に遺産分割が行われていた場合、それは有効とされます。
ただし、相続財産を受け取った相続人は取消しがされた時点で手元に残っている財産があれば本人に返還しなければいけません。それまでに消費した金銭や売却した不動産などについては返還する必要はありません。
遺言書の作成・相続手続きは当事務所へ
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