法的にどこにでも通用する遺産分割協議書
実は、遺産分割協議書に法律上はっきりとした形式は定められていません。
しかし、実務上不明確な遺産分割協議書の場合、銀行や登記所でその遺産分割協議書が使えないことが多々あります。
遺産分割協議書は、
①相続人間の合意を示した書面という性質の他に、
②各種手続きで使う書面(相続人間の合意を対外的に示す書類)
という性質があります。
相続手続きでは、①②いずれも満たす必要があります。
行政書士は国家資格者の中でも書類の作成の専門職ですが、その中でも、相続手続を多く経験している行政書士に頼めばより安心です。
あとで思わぬ財産が発見されたときにも通用する遺産分割協議書
遺産分割協議書は、相続人様自身でも作ることができるものです。
しかし、せっかく作成した書面でも、まったく知らない財産が数か月後に発見されることもあります。
例えば、亡くなった方が道内のリゾート地のゴルフ会員になっていることを知らず後で発見されたり、遺品整理をしていたら、売ると高額になる骨とう品が出てきたりしたときなどです。
その時に、その全く当初知らなかった財産を誰が取得するか幅のある記載をすれば、結果的に亡くなった方の財産が処理できないということを避けることができます。
このような万が一のリスクも想定して書類を作成できることも相続専門の行政書士なら可能です。
相続手続きの中心となる書類は、遺産分割協議書です。
その遺産分割協議書を相続人でない他人が業務として作る場合には、国家資格をもつ行政書士でなければ原則としてできません(若干書類の作成の性質が異なりますが、弁護士や司法書士もできます)。
中でも、遺産分割協議書はその後すぐに手続きに使用するという点で、契約書などと異なります。
相続専門の当事務所なら、多くの相続手続きを行ってきた経験から完全な漏れのない遺産分割協議書を作成いたします。
遺産分割協議
相続人の調査で法定相続人を確定し、相続放棄等の期限が経過すると最終的に遺産を相続する相続人が確定します。
相続人が一人の場合は遺産を単独で相続するので協議は必要ないのですが、複数人いる場合は誰がどの財産を相続するのか協議して決めなければいけません。この協議を遺産分割協議といいます。
通常、遺言書があれば遺産分割協議よりも遺言書が優先されます。
とはいえ、遺言書があったとしても、次のような場合は遺産分割協議が必要です。
- 遺言書があっても全ての遺産の分割について書かれていないとき
- 遺言書があっても「○○に全財産の3分の1を相続させる」と遺産分割について割合で指定されているとき
遺産分割協議は相続人全員で行い、最終的に全員の同意を得るようにしなければいけません。相続人が一人でも欠けた分割協議や、全員が同意していないものは無効となり認められません。
遺産分割の方法
遺産分割について、法律では法定相続分(相続人が相続できる割合)が決められていますが、実際の遺産分けではこれにこだわる必要はありません(ただし相続税が課税される場合は注意してください)。
最終的に相続人全員が合意できれば構わないのです。
遺産分割協議には主に次の三つのやり方があります。
- 現物分割
→ 「Aは不動産の全てを取得し、Bは預貯金の全てを取得する」といった具合に現実にある遺産を、誰が何を相続するのか個別に割り振っていく方法です。遺産分割の一番基本的な方法です。 - 換価分割
→ 不動産や自動車のように分けることができない遺産を売却し、売却で得た金銭を各相続人で分割する方法です。 - 代償分割
→ 相続人の中でどうしても相続したい遺産があって、それが遺産にある預貯金等だけでは他の相続人とのバランスが取れない場合、遺産を相続した相続人が遺産を相続する代わりに、自分の資産から金銭などを他の相続人に支払うことで全体のバランスを取る方法です。
遺産分割協議が当事者だけではまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判を利用することがあります。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で話し合いがまとまると、次は相続税の申告や遺産の名義変更等の手続きを行うのですが、その前に遺産分割協議を作成するようにしてください。
遺産分割協議書は必ず作成しなければいけないものではありません。ただ、そのときは話し合いに納得していても、後になって気が変わったりして「言った」「言わない」の争いになることもあります。無駄な争いを防ぐためにも、遺産分割協議書を作成することをお勧めします。
遺産分割協議書に決まった様式はないので、基本的には自分で現状にあわせた内容の協議書を作成しなくてはいけません。作成するときには以下の点に注意して作成してください。
- 誰の相続についての遺産分割協議書なのか分かるように被相続人の「名前」「生年月日」「死亡日」「本籍」「最後の住所」を戸籍等のとおりに記載してください。
- 不動産について記載するときは登記簿謄本のとおりに記載してください。特に市街地では「地番」と「住居表示」が違うことがあります。(※)
- 預貯金について記載するときは「金融機関名」「支店名」「口座の種類」「口座番号」を記載してください。
- 株式、国公債、ゴルフ会員権などについてもできる限り具体的に、第三者が見て特定できるように記載してください。
- 相続放棄の手続きはしてないけど何も相続しない相続人がいるときは、遺産分割協議書にその旨を記載し、その相続人も署名押印してください。
- 遺産分割協議書に使用する印鑑については、原則として全員実印を使用し、印鑑証明を添付してください。
- 相続人が署名押印するときには、住所や名前の漢字について住民票や印鑑証明に記載されているとおりに記載してください。
- 相続人に未成年者がいる場合、未成年者に直接署名押印をさせるのではなくまず「特別代理人」を選任する必要があります。
(※)「地番」は実際の土地を特定して所有を明らかにするためにつけられた番号、「住居表示」は郵便物などを配達しやすいように地番とは関係なくつけられた番号のことです。不動産登記は「地番」で行われているので、遺産分割協議書には「地番」で書くようにしてください。
また、遺産分割協議がまとまり遺産分割協議書を作成した後になって、新しく遺産が見つかることがあります。通常であれば、新しく見つかった遺産について再度遺産分割協議をしなければいけません。
そこで遺産分割協議書に「本協議書で定めた遺産以外の遺産が発見されたときは、相続人○○が全て相続する。」という一文を入れておけば、後々の手間を省くことができます。
遺言書の作成・相続手続きは当事務所へ
人の気持ちは時間が経つと変化します。後で気が変わってトラブルにならないようにするためにも遺産分割協議書を作成することをお勧めします。遺産分割や協議書の作成等で困ったときは当事務所へご相談ください。