相続手続きをしないデメリット
「相続手続きの期限と流れ」でも紹介していますが、相続手続きには期限があるものがいくつかあります。
- 相続放棄、限定承認の手続き
自己のために相続の開始を知ったときから3ヶ月以内 - 準確定申告
相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内 - 相続税の申告
相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
上記の手続きは必ずやらなければいけない手続きではなく、必要に応じて行う手続きです。
また、相続財産(預貯金や不動産等)の名義変更等には手続きの期限がないので、上記の手続きをしなくてもいい人は、遺産の名義を被相続人のままにしている場合があります。
ところが相続手続きを放っておくと、いくつかのデメリットが発生することがあります。
デメリット1.借金を相続するかも…
相続財産に多額の借金やローンがある場合、その対策として「相続放棄」や「限定承認」の手続きが有効です。
しかし「忙しい」「面倒」といった理由で相続手続きを何もせずにいると、次のような事態が考えられます。
- 被相続人が死亡してから忙しくて何も手続きをせずにいたら、半年ほどしたときに被相続人の借金の返済を迫られた
- 被相続人の財産は何もいらないので、その旨を他の相続人に伝えて放っておいたら、いきなり被相続人の借金の返済を迫られた
特に2.の場合は注意が必要です。
「何も財産を相続しない=借金を相続しなくていい」ではありません。私は何も遺産を相続してないから借金は関係ない、というのは法的にとおらないのです。
このような事態を防ぐためには、相続財産として何があるのか調査する、何も相続したくないのであれば期限内に相続放棄の手続きを行う、ということが重要です。
デメリット2.財産の処分が自由にできない
人が死亡すると、その人が所有していた財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産ということは、相続人が複数人いる場合、その中の一人が勝手に財産を処分することは認められず、財産を処分するときには全員の同意が必要になります。
ということは、いざ財産を処分したいときになって他の相続人の同意が得られないと、次のようなことになる可能性があります。
- 被相続人名義の不動産を買いたい人が現れても、自分一人ではどうすることもできない
- 被相続人の預貯金を使いたいのに、口座を凍結されていて使えない
不動産や預貯金等の相続手続きには期限がなく、罰則もありません。
とはいえ、相続手続きを放っておいて、いざ何かあったときに遺産分けの話し合いを持ちかけたとすると、他の相続人はどう思うでしょうか?
- 今まで何もいってこなかったのに、急に遺産分けの話なんて何かあるのでは?
- 被相続人が死亡して何年も経っていて今まで困ったこともないのに、今更相続手続きなんて面倒だからしたくない
このように思う相続人もいるかもしれません。
また、当初は「いつでも判を押すから」と言っていたのに、いざ話をしに行くと「納得できない」と態度が変わることがあります。人の気持ちは、時間が経ったり状況が変わると変化してしまうものです。
相続手続きをスムーズに行うには、タイミングも重要な要素になります。できるだけ早い段階で落ち着いて話し合いを行い、まとまったときには早めに手続きを終わらせることが、お互いに納得できる遺産分割をするためのポイントです。
デメリット3.相続人が増える
これは1年や2年で起こることはあまりないのですが、数年から10年などの長期間、相続手続きをせずに放っておくと起こりうる可能性があります。
どのようなことか、具体的に一つの例を挙げて説明します。
上の事例だと、相続人が3人から4人に増えることになります。
この場合、相続人全員が日頃から交流があり、意思疎通ができればまだ話がしやすいのですが、日頃あまり連絡を取っておらず疎遠になっていると、話し合うことや合意を得ることが難しくなります。
また、相続人に未成年の子が入ってくると「特別代理人の選任手続き」が必要になることや、他の相続人が遠方で生活している場合は話し合いをするだけでも時間や費用がかかることも考えられます。
とはいえ、このような事態になってどんなに後悔しても後に戻ることはできません。
結局、早いうちにちゃんと相続手続きをすることが後々のトラブルを回避する最善の方法になります。
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